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書籍案内(陽明学のすすめ[ 人間学講話「中江藤樹」)
<序文>
深澤賢治著『陽明学のすすめ [ 人間学講話「中江藤樹」』
元公益財団法人斯文会理事長・全国漢文教育学会会長  石川忠久

送熊澤子     中江藤樹
淵鑑惟幸     淵鑑惟れ幸いなり
動而無動靜無靜  動いて動くなく静にして静なることなし
無倚圓神未發中  無倚円神未発の中
慎獨玄機必於是  慎独の玄機必ず是に於いてす
上天之載自融通  上天の載(こと)も自ら融通 

 動いても動かない。静かなようで静かでない。思想詩というか哲学詩というか。静とか動とかは世の中の見方であって、静も動も同じだと言っている。蕃山を褒めているわけです。蕃山はこれから外に向かって色々開いていくだろうが、まだそれは中にこもっている。未発だというのでしょう。こういう詩は読んでいるうちに成る程となる。いかにも熊澤蕃山を送るのにふさわしい。
 蕃山としては師匠がとても自分に期待していると分かる。こういう詩をもらったら、これは大変だ。先生が一生懸命考えて、腕によりをかけて作ったものだ。「慎独の玄機必ず是に於いてす」などは相当練っている。蕃山は発奮するしかないな。

 この度、斯文会の湯島聖堂で毎月一回講話を重ねている中斎塾フォーラム深澤塾長が、「陽明学のすすめ [」として中江藤樹を執筆致しました。人さまに親切な人が少なくなった昨今、こういう時には近江聖人と言われた聖人の足跡を尋ねてみるのも良いのではないかと思います。徳行の人と言われた人の後を尋ねる。今の時代だからこそ、落ち着いてこういう本に親しんでみることをお勧めします。